1.介護保険料・利用料の減免制度について
市独自の一般会計からの繰り入れで、県下で一番高い介護保険料の引き下げを(柴田議員)
(1)介護保険料・利用料の独自減免
【柴田議員】通告に従い、健康福祉局長に順次うかがいます。
消費税が上がって物価も上がり、介護保険料も年金から天引きされ、高齢者の暮らしは本当に大変だと悲鳴が上がっています。
今回の予算で、消費税の10%への引き上げ分を原資とした介護保険料の引き下げが提案されていますが、これは国が全国一律に行うものであり、引き続き名古屋市が愛知県下で最も介護保険料が高いことに変わりはありません。
私たちはそもそも逆進性の強い消費税には反対ですが、今回の引き下げ策には、国が1/2、県市が1/4ずつを、一般会計から投入するスキームになっています。国が先導して一般会計からの繰り入れを行うスキームを開始したのですから、市としても、さらに一般会計からの繰り入れを行って、独自の介護保険料の引き下げに足を踏み出せるタイミングがきたのではありませんか?
【質問1】 そこで伺います、従来の答弁で「全国一律の制度だから」「国が一般会計からの繰り入れを禁じているから」などと繰り返してこられましたが、この国の変化を受けて、例えば、一般会計からの繰り入れを行って、第1第2階層、非課税世帯の介護保険料を0にするぐらいの独自軽減策を開始する考えはありませんか?
低所得世帯向けに介護保険利用料の独自軽減策を(柴田議員)
【柴田議員】また、利用料の自己負担も重くのしかかっています。表のように、市民税非課税世帯に対して、訪問介護の利用料負担を半額にしている江南市など、県下の他都市では一般会計からの繰り入れも行いながら工夫と努力をしている例があります。
地図のように、愛知県下の54自治体中7割38の自治体が、介護保険料・介護保険利用料のいずれか又は両方について、独自の減免制度を設けています。白い部分、わずか3割16の自治体だけがどちらの独自減免も設けていません。
【質問2】 そこで伺います。規模の小さい他都市でできて、名古屋市が独自の利用料減免制度を作れない理由は何かあるのでしょうか。一般会計繰り入れも行って低所得者などの介護保険利用料の負担軽減に踏み出す考えはありませんか?
介護保険料・利用料の負担軽減は全国一律で、法制度の枠組みで対応(健康福祉局長)
【健康福祉局長】 介護保険料および介護保険利用料の負担軽減は、介護保険制度は全国一律の制度であることから、本来、法制度の枠組みの中で対応するべきものと考えています。
保険料につきましては、平成27年度から、消費税率の改定分を財源とした公費による保険料軽減の拡充が講じられたところであり、平成31年10月からの消費税率10%への引き上げに合わせて、更なる軽減強化を予定しています。
その際には、市独自の引き下げを継続したうえで、国が示す公費による軽減幅の上限を適用することにより、低所得者の保険料を最大限軽減する予定です。
また、利用料は、法制度の枠組みの中における低所得者の利用料負担軽減のための事業として、平成30年1月から認知症高齢者グループホームに入居する低所得の方に対する居住費の助成を行っています。
保険料・利用料の負担軽減について必要な措置を講ずるよう、大都市民生主管局長会議等の要望活動を通じ、国に対し要望しています。
非課税世帯からも保険料を徴収する厳しい制度を改めよ(柴田議員)
【柴田議員】そもそも、国民健康保険と並んで、非課税世帯からも徴収するという、根本的に弱者に厳しい仕組みになっている介護保険制度の「法制度の枠組み」によって苦しめられている市民を何とかして独自の制度で救えないかというのが質問の趣旨です。しかもその国の方が、一般会計からの繰り入れ禁止という原則をついに打ち破る制度を始めたわけですから、その考え方を受けて、前に進む機会が来たのではありませんか。
今年度97億円もの予定外の税収増があり、地方交付税等が44億円も削られました。さらに市民税減税で120億円近い税収を失っています。本当に市民の苦しみに正面から向き合うなら、介護保険料・利用料の独自軽減策をさらに拡大する財源はあります。
一般会計からの繰り入れを大胆に行い、介護保険料・介護保険利用料の大幅な独自減免を実現してほしいと強く求めます。
収入減少による介護保険料の減免申請期限の撤廃を(柴田議員)
県介護保険審査会も「被保険者の不利益となりかねない事例を懸念」と指摘
(2)所得減少による減免制度
【柴田議員】 介護保険料の減免制度の一つに、所得減少による減免制度があります。名古屋市の場合、この申請には「事由の発生時から6カ月以内に申請すること」と規定されています。
先日ある方から生活相談を受けました。表の<相談者が減免申請できなかったケース>をご覧ください。その方の母親は、昨年2月までパートで働いていて体調不良のため退職し、それ以降、年金のみの収入で息子さんと生活しています。年金金額は1カ月あたり27,623円。糖尿病、白内障、骨折など医療費をそこから支払っている。その後9月の誕生日に65歳になり、名古屋市の介護保険第1号被保険者となりました。そこで初めて、前年度の所得に基づいて算出された介護保険料6,710円の請求が名古屋市から届き、とても払えないと窓口に相談します。ところが、収入の激減が起こったのは2月であり、そこから起算して6カ月の8月までで減免申請の期限は切れているから申請できないと言われたというのです。月27,000円余の年金収入に対して、6,700円余の介護保険料という過重な負担は、当然減免されるべきです。ところが、この介護保険料を知る前に、減免申請の期限が切れてしまうという、理不尽な落とし穴が開いているのです。
ちなみに名古屋市の国民健康保険料の収入減少に伴う減免申請については、申請期限は設定されていませんし、他都市の介護保険料減免では、一宮市、豊田市などとくに期限を決めていない自治体もあります。
この相談のケースでは、相談者は愛知県介護保険審査会に不服審査請求を行いましたが、この行政処分が規定違反ではないため「請求棄却」との判断でした。しかしその裁決書の本文とは別に、「別紙」を付けて、「本件の争点である保険料の減免申請の期間について、名古屋市においては」……「被保険者の状況によっては、細則による申請期限が条例の定めよりも早期に到来し、被保険者の不利益となりかねない事例も懸念される。」と本制度の矛盾点について、わざわざ指摘しています。
【質問3】この「被保険者の不利益となりかねない事例も懸念される」との指摘を重く受け止め、制度の改善に取り組むことが必要ではないでしょうか?見解をお聞かせください。
また、表のように、収入減少を理由にした減免制度の適用条件は、申請期限の問題以外にも国保と比較して極めて厳しい条件となっており、改善が必要です。引き続き改善を求めていきたいと思います。
介護保険料減免の申請期限は見直しを検討(健康福祉局長)
【健康福祉局長】 本市の所得減少の減免は、申請期限を収入減少理由の生じた日から6月以内と定めていますが、これは、失業等収入減少理由が発生した直後は、一時的に無収入となり、納付困難な状況となるものの、その後は就職や年金受給開始等により、一定の収入が得られることを想定しています。
しかし、議員ご指摘のように、65歳に到達する6月以上前に失業した場合は、本市の減免申請期限の規定により、減免が申請できない状況となっていますが、失業後一定期間を経過した後も病気などにより無収入が続き、給付困難な状況である方には、減免を適用する必要があるものと考えています。
そのため、65歳に到達する6月以上前に収入減少理由の生じた納付困難な方にも、減免が適用されるよう、他制度や他の自治体の状況も踏まえ、減免申請期限のあり方について検討していきたいと考えています。
すぐに改善を(柴田議員)
【柴田議員】 減免が適用されるよう検討に入るという前向きな答弁をいただきました。どう考えてもおかしい落とし穴をふさぐだけの修正ですから、すぐにもやるべきです。できるだけ速やかに実現していただくよう求めます。
2.障害者が65歳になると介護保険が優先適用される問題について
障害福祉65歳打ち切りは違法の判決(柴田議員)
【柴田議員】 次に、いわゆる「障害者の65歳問題」について伺います。
障害者の福祉制度を利用している人が、65歳になると、「介護サービスと類似のサービスについては、介護保険を優先する」という対応となっている実態があります。その根拠とされている規定が、障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)第7条です。この障害者自立支援法を巡っては、「基本的人権を侵害し、憲法に違反する」として法の廃止を求めた「障害者自立支援法違憲訴訟団」と厚生労働省との間で、「介護保険優先原則を廃止し、障がいの特性を配慮した選択制等の導入を図ること」などの項目を含む基本合意書を2010年に交わしていたにもかかわらず、その後2013年に施行された障害者総合支援法の中で、そのままの条文が残されてしまったという経緯があります。しかし、もともとこの7条の規定は、二重給付を防ぐための「他の法令による給付との調整」という項目であり、厚生労働省自身、自立支援法施行の翌年2007年の通知で、この7条の「介護保険優先」規定について、「一律に介護保険給付を優先的に利用するものとはしないこと」と、状況に応じて自治体が判断するよう求めています。
しかし、窓口での対応には個別のケースによってさまざまばらつきがあり、65歳を迎える障害者の間には「機械的に介護保険の申請を強制されるのではないか」との不安が広がっています。
岡山市で、昨年末、一つの重要な判決が出されました。65歳以降も障害福祉の重度訪問介護を継続してほしいからと、介護保険の申請をしなかった方が、障害福祉サービスを打ち切られたというケースで、利用者の方が岡山市を相手に、サービスの継続を求める訴訟を起こし、広島高裁で利用者側の勝訴が確定したのです。
この判決文では、かつて厚労省が2010年に、内容も目的も異なる介護保険優先の原則の廃止の検討を約束したことも指摘しながら、介護保険の自己負担が障害者にとって負担であることも考慮し、むしろ障害者福祉優先にすべき場合はそうすべきだと、明確に示しています。
【質問4】 そこで伺います。65歳での障害福祉の介護保険への切り替えについて、名古屋市での適用状況はどうなっているでしょうか。そして、この岡山の判決を受けて、名古屋市として今後どのようにしてゆくべきと考えているでしょうか、見解をお聞かせください。
介護認定申請を行わない障害者には、従来と同じ障害福祉サービスを支給する(健康福祉局長)
【健康福祉局長】 65歳到達時の介護保険サービスと障害者福祉サービスの適用状況について、本市では障害者総合支援法第7条に基づき、ホームヘルプサービスなどの障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合には、基本的には介護保険サービスに係る給付を優先して受けていただくこととしています。
しかし、障害のある方の心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、一律に介護保険サービスを優先させることだけで必要な支援を受けることができるとは判断できないため、国の通知に従い、介護保険サービスのみによって必要な支援を確保することができないと認められる場合について、必要に応じて障害福祉サービスでも支給決定をしています。
次に、岡山市におきまして、65歳に到達した以降も障害福祉サービスを継続して利用したいため、介護保険の要介護認定の申請を行わなかった方が、障害福祉サービスを打ち切られた件についての裁判で、広島高等裁判所が障害福祉サービスの継続利用を認めた判決についてです。
本市では、介護保険の要介護認定の申請を行わない障害のある方につきまして、生活に急激な変化が生じないよう、これまでと同様の障害福祉サービスの支給決定を行い、並行して介護保険の要介護認定の申請についての理解を得られるように勧奨を行っているところです。
判決を受けての本市の見解は、現在国の考え方に沿って適切な対応を行っており、引き続き、障害のある方が65歳に到達した時に困られることがないよう対応するとともに、今後も国の動向についても注視していきたいと考えておりますのでご理解賜りたいと存じます。
障害者福祉サービスの継続希望者には、そのまま利用できるとの答弁は評価できる(柴田議員)
【柴田議員】 答弁で、介護保険優先の原則を一律に適用するべきでないとの考え方のもと、障害者福祉サービスを継続することを希望される方には、そのまま利用してもらっているということがわかりました。
その答弁自体は良いと思いますが、その前提に色々たくさん言われるので、結局、介護保険を優先で申し込まなければならないのだ、もう障害福祉サービスは受けられなくなってしまうのだ、という誤解をしてしまう方も多くいるのです。国は介護保険優先と言っているけれども、障害福祉サービスが受けられなくなってしまうわけではないですよ、必要な障害福祉サービスを継続して支給できますよ、介護保険の申請はお勧めしているだけですよ、ということを、もっとわかりやすく説明することを窓口にも徹底していただきたい。
次の段階としては、国の考え方に残っている介護保険優先自体が、論理的におかしいんですよね。介護保険はもともとあった障害とは別に、加齢による新たな心身の変化が原因で、要介護状態が拡大する部分が対象であるはずです。だからもともとあった障害に対する障害福祉サービスはそのまま利用できて当然なんだと、そのように考え方をすっきりとさせるべきなんです。
名古屋市としても、その立場に立つ努力を独自にもしてほしいと要望して、私の質問を終わります。