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柴田民雄ニュースNo.111(2023-03-19)

再掲市民税減税とは何か?

あらゆる物価が上がる中で、暮らしをささえる緊急の経済施策が求められています。その中で名古屋市が継続している市民税減税のマイナスの効果が際立ってきています。2019年に発行した、柴田民雄ニュースNo.35~38で掲載したシリーズ「市民税減税とは何か?」のダイジェストを加筆修正の上再掲します。

市民の半分は減税ゼロなのに庶民の暮らし応援と言えるのか?

河村市長の看板政策とも言える「市民税5%減税」ですが、①「市民生活の支援」と、②現在と将来の「経済効果」の二つを目的とすると条例に定められています。はたして市民税減税は本当にこの目的に沿った施策なのでしょうか。

今経済的に苦しい立場の皆さんと、減税の恩恵に浴する立場の皆さんは、重なり合っていません。

例えば子育て世帯で、子どもの人数が増えるほど家計は苦しくなります。しかし、子どもは減税は0円です。子育て世帯にプラスの減税の恩恵はありません。

生活保護の方や、非課税世帯の方も同様に、減税は0円です。なんの恩恵もありません。

全市民の9割の皆さんは、減税額は1万円以下。月額にしたら0円〜833円の間です。

一方で、残りのたった1割以下(9.9%)の高額所得者のみなさんのところには、1万円〜500万円が減税という形でプレゼントされています。最高額500万円減税された人は、課税対象の所得だけで17億円もの所得があることになります。はたしてこのような方を応援しなければならないのでしょうか。

つまり市民税減税で応援される「市民」とは苦しい市民ではなく、一握りの高所得者のことなのです。

この実態を市民にちゃんと伝えずに、あたかも「庶民の暮らし応援」であるかのように宣伝する河村市長と減税日本のやり方は、市民をだますものです。

もともと一律5%の市民税減税で、生活の苦しい市民生活を応援することは不可能なのです。学校給食の無料化(子ども1人年約5万円)、国保の子どもの均等割をゼロに(子ども1人年5.5万円)、介護保険料の引き下げなど福祉施策を拡充するほうがはるかに困っている皆さんに恩恵があります。日本共産党は、最初から一貫して市民税減税には反対し続けてきました。

財政局検証で経済効果はマイナス

財政局が2017年に報告している市民税減税の検証結果を見てみます。

「名古屋市:市民税5%減税の検証について(平成29年度)(暮らしの情報)」のページで公開されています。(QRコード)

検証は[1]個人・企業へのアンケート調査、[2]マクロ経済モデルに基づくシミュレーション、の二つの方法で行われました。

企業アンケートからは、減税が市民の給与アップにはほとんど繋がっていないことがわかり、ここでも市民生活の支援になっていないとがわかります。

目的②現在と将来の「経済効果」について、報告書では、市民税5%減税を10年間行った場合とおこなわなかった場合についてシミュレーションしました。その結果、全ての指標で、市民税減税を行った方が成績が悪いという結果になりました。

報告書のシミュレーション結果は次ページの図のようになっています。

直接的な経済活動そのものを示す指標である「市内総生産」「民間総支出」「企業所得」が全て悪いということは、市民税減税によって経済活動が阻害されたということです。「人口の社会増」の指標が悪いことも、市民税減税が本来の発展を阻害していると言えます。

また将来の経済効果についてもきわめて限定的と評価されています。

法人市民税減税は廃止に

これらの「全面的に減税の効果がなかった」という検証結果を受け、法人市民税減税は2019年度から廃止となりました。

本質はリバタリアニズム=自由至上主義

このように意味のないことを毎年税金(2022年度92億円)を使って行う目的は何でしょうか。

河村市長は、リバタリアニズム(Libertarianism 自由至上主義)と呼ばれる、新自由主義を極端に進めた思想を主張しています。

簡単に言えば、競争で格差を広げることが良いことだ。富裕層の利益のために税金を安くせよという主張です。

ただし、むき出しにそれを主張すれば当然市民から反発されるので、ポピュリズムの化粧を入念かつ巧妙に施しています。

市民サービス削減のテコに

そして、市民税減税による意図的な「税収不足」をテコに、市立保育園の廃止・民営化、小学校給食調理民間委託化、市立特養厚生院の廃止、地域療育センターの民間移管、要介護認定事業の1か所の民間センターへの集約、市民病院の独立行政法人化など公的福祉のあいつぐ縮小・解体、市民サービスの削減をすすめているのです。

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